ハーモニー (2014.8.8 伊藤計劃)

読書

こんにちわ、しらすです。

伊藤計劃のハーモニーを再度読んだので、記録として残したいと思います。科学的な側面から、”意識”とは何かを考えさせられる良本です。やはりおもしろい。

虐殺器官以降の世界を描いたようなユートピア(解説では倒立したデストピアと記述される)小説。人工的に生活が管理され、病気が無くなった世界を描くが、本質は人の意識を管理するという部分。

健康を管理するWatchmeという生体機械により人体の状態が常に管理されているが、脳は不可侵領域として維持されている(とされている)。しかし実際は、双曲線で定義される脳の報酬系の定義を変更することで、間接的に人間の意識を操作することができる

環境要因により変化する複数の無意識のせめぎ合いで、人の意識を形成するという考え方は、昨今の人工知能研究で注目されるニューラルネットワーク(ディープラーニング)での実装と類似している。

また作中では意識を持たない民族が出てくる。理不尽な双曲線ではなく、価値を最大化するよう常に合理的な判断のみを下す集団。「哲学的ゾンビ」とも言われる。合理的な判断を下す=意識がないという定義はとても皮肉めいていておもしろい。

人工知能の行き着く先は「双曲線により価値を最大化できないが意識を持っていると考えられる」ものか、それとも「価値を最大化するが、意識を持っていないと考えられる」ものなのか。

「人工知能に意識を持たせる」ということは、合理的でない判断を下す機構をおりこむということが必要なのかもしれない。

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