読了メモ 「「E=mc2」世界一有名な方程式の「伝記」」(2010/9/22 デイヴィッド・ボダニス)

読書

こんにちは、しらすです。

購入してからしばらく積読していたE=mc2についての本書を読んだので読了メモを残したいと思います。

さて、本書は皆さんご存知の超有名物理学者であり宇宙物理学の基礎理論である相対性理論の提唱者アルバート・アインシュタインが発見したE=mc2という式について説明する書籍です。

この式については様々な本やサイトで説明されていますが、本書が特徴的なのは、アインシュタインの歴史ではなく、E=mc2の歴史についてまとめていることです。

アインシュタインが1905年にE=mc2を発表する以前と以後の歴史についても記載している点でしょう。

それぞれの歴史的背景が細かく、そしてわかりやすく書かれているため、読み進めるにつれどんどん新しい知識が、歴史に沿って入ってきます。

以下が本書の構成である。

  • E=mc2それぞれの歴史
  • ウランの核分裂の発見
  • 核分裂と核融合の実用化
  • 宇宙を構成する E=mc2、核分裂/核融合反応

E、m、c それぞれの歴史

そもそもエネルギーや質量、光速はどのように発見されたのか?

それぞれの成り立ち、すなわち

  • E:エネルギー
  • = : 等号
  • m : 質量
  • c : 光速
  • 2:二乗

これらがどのような歴史で発見されてきたか、ご存知でしょうか?

今では当たり前のE:エネルギーという概念は如何に生まれたのか!?

個人的に最も面白かったのはエネルギーという概念が生まれたところです。最も序盤で記載されていますが、ファラデーが”電磁回転“を発見したところです。歴史的に物理学は直線運動の中ですべての事象が説明されていましたが、当時ファラデーが信仰していた宗教では「円」を重要なものとしていたとのこと。

これにより、歴史的な「直線」ではなく「円」という概念を以って物理現象を観測し、見事に電流を流した導線の周囲に円状の磁界が発生することを突き止めたということです。

宗教的、歴史的偶然が重なり、このような発見がなされていたこと、この時代にこの人がいなければ物理学の発展は遅れていたかもしれません。

質量とは?

ご存知アイザックニュートンの万有引力の法則によって発見された概念。重量は、質量×重力加速度で定義される。ちなみに、地球表面上での重力加速度は9.8m/ss。

光速の発見

光は速度があるのだろうか?

あまりに普通に存在し、連続的に発生している「光」。通常我々が生活している中で、「光の速度」を気にすることはないと思う。移動する物質などとは違い、光は触れることができないし存在っも確認できない。光が当たり、反射した光を網膜でとらえることで、我々人間は周囲が”視える”。そのため、日常生活においては光を光として感じることは少ないと思う。

ものとしての存在が認識できない”光”に対して、速度を測定しよう!と考えることはとても難しい。それは、地平線しか見えない水平な地球(地球平面説)を、実は球体だ(地球球体説)と唱えることに似ていると思う。

さて、光の速度を世界で初めて計測しようと思ったのはだれか?

それは、皆さんもご存知のガリレオガリレイである(ちなみに地球球体説もガリレオガリレイが提唱したもの)。

光速の計測

ガリレオによる世界で初めての光の速度の計測は、上手くいかなかった。理由は2つ。

  1. 計測に使用する距離が1マイル程度と短かったこと
  2. 光があまりに高速であること

その時の計測では、光は超高速 or 無限大の速度をもつ、と認識するのみであった。

天文学者カッシーニの弟子であるレーマーが1676年に、木星の陰からイオという天体が現れる時間を計測した。なぜかイオが木星の陰から現れる周期は一定ではなく、それまではだれも法則性を見つけることができなかった。時期によって地球と木星の距離が変わることに着目し、この距離に応じてイオが出現する時間が変わると考えた。この考えに合わせて算出されたイオの出現時刻がぴったり一致した。この時に算出された光の速度は、 のちに正確に求めた光の速度とほぼ同等の値出あった。ちなみに、光の速度は30万km/s、マッハ90万となる。

光の進む原理

補足のメモだが、光の進む原理についても記しておく。

ファラデーの電磁回転の時に発見されたように、電流の周りには磁界が発生する。逆に、磁界の周りには電流が発生する。電流と磁界が交互に発生していき、鎖のようにつながっていく相互作用により波として伝搬していく。これが光が伝わっていく原理だ。この相互作用はジェームズ・クラーク・マクスウェルによって発見され、のちにマクスウェル方程式として定式化される。

E=mc2

運動エネルギーの方程式としてE=mv2というものがある。1905年にアンシュタインが発表した(特殊)相対性理論おいて、光の速度cは絶対に超えられないと定義されている。

例えば亜光速で運行しているロケットがさらにエネルギーを得ていくとどうなるか?エネルギーを加えた分だけどんどん加速していき、最後には光速に達し、そして光速を超えるだろう。ただし、相対性理論では、光の速度は絶対に超えられない。ではどうなるか?

エネルギーを加えた分だけ物体の質量が増す。例えば、光速の90%で2.3倍、99%では7.1倍、そして100%では無限大である。速度を上げるにはエネルギーが必要となるが、質量が増えると必要なエネルギーも増大し、無限大の質量の物質はこれ以上加速することはできない。

「エネルギーを与えることで、質量が増える。この事実は、一定の条件下では逆に質量が減ることでエネルギーを発生させることができる」と考えることができるはず。

運動エネルギーの方程式は冒頭で述べたようにE=mv2であらわされる。v=cが速度の最大値であるため、vにcを代入したE=mc2が最大のエネルギー量となる。

質量mからエネルギーEを取り出す方法 ~ウランの核分裂の発見~

1898年、マリー・キュリー夫人がエネルギーを発生し続ける謎の状態を「放射能」と呼んだ。

この物質は、エネルギーを発生し続けているにもかかわらず質量は全く変わっていなかった。後の研究でこの物質がごくごく微小な質量を核分裂によって失うことで、光速の二乗にも上るエネルギーを放出していることが分かった。

ウラニウムは天然に確認されている元素の中で最も原子番号が大きい物質である。ウラニウムは中心の原子核の中に大量の陽子と中性子を持っており、何かの拍子に中性子が飛び込むと、電化のバランスが崩れ、原子核が分裂する核分裂を起こす。核分裂後は原子番号がちょうど半分のバリウムと余分になった中性子が発生する。バリウムに変化したとき、ウラニウムだった時から微小に質量が減少している。この減少分の質量がエネルギーへと変換され、核分裂及び原子核が飛散するエネルギーとなっていた。

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