2015年末に発刊された資本主義に関する経済本です。
ゼロ金利と世界各国の成長率の変異から資本主義の本質的な終焉について述べている興味深い書籍でした。社会の動向をつかみ、今後の生き方について考えるヒントになる良書。
資本主義の本質と終焉
資本主義は本質的に、規模が拡大していく中で「より早く、より遠くに、より合理的に」を突き詰めることで成長してきたものとのこと。しかし、世界の大半の国がいまや”成熟期”に入っており、規模を拡大する余地がなくなってきている。その結果が、GDPの低成長であり、ゼロ金利であるということだった。
気づきと今後の展望
この”低成長”は悪いことではなく成長によって勝ち取ったものであり、生活のあり方を変えていけばよいだけだという意見が印象的でした。「足りないものがない」という現代において必要以上の経済成長を望む必要がないのだという安心感になりました。
※ちなみに、規模の拡大が望めない現代において、むりな経済成長要求は経済にバブルを招くことになりむしろマイナスとのこと。
ゼロ金利、低成長自体を迎え、20世紀に成長を遂げてきた”資本主義”がいまおわりを迎えようとしています。経済の過度な成長に期待しないこと、を意識してこれからの経済を見ていくという視点が付きました。
気になったコメントを抜粋
「利息のつく金(かね)」こそが資本の本質であり、交換手段としての貨幣と区別しなければならない
本書 p.54
ゼロ金利となり、社会の成長が止まってきた世界において、利息がつく金はなくなってしまった。これを以って、資本主義の終焉としている。
政府や財界はビッグデータ、IoT、そしてAIによって、一段の生産性向上を期待しているのですが、これらはいずれも「より早く、より遠く」の延長線上にある発想です。地球が「有限」となった二一世紀において、これらに期待することは百害あって一利なしです。二一世紀に生産性を一段と向上させようとすれば労働力を減らすしかないのですから、ITを切り札に成長しようとすればするほど、中間層の仕事がなくなり、近代=中間層の時代を崩壊させるのです。
本書 p.43
世界中で進むIT化は中間層を削り取ることになり、格差が拡大する。現在の日本社会は十分に成熟されており、格差も少なく安全である。国民の意識が”成長”から”楽しみ”に変わってきた社会において、国の過度な成長を求めることは格差拡大に向かうということが理解できた。特に世界のIT化は格差拡大にクリティカルに効いてくるということがよく分かった。
現在の状態は「成熟社会」であり、不必要に成長を求めるのではなく、これから拡大しうる”格差”を是正することに力を入れるべきだ、という意見も納得。世の中ではIT化が進んでいき、自分もこのIT化に参加する一人なので「IT化→格差拡大」の関係性については今後注視していきたい。
もう「モノが欲しい」っていう欲求が亡くなってきていますね。満たされていて、しかも性能がよくなってきているから
本書 p.248
日本の社会はすでに必要なものは十分に満たされており、モノに対する欲求が著しく低下していると述べている。以前は「ほしいものがあるから頑張る。物欲は正義」と思っていた。最近自分の物欲がなくなってきたので危機感を感じていたが、自分だけではなく日本社会全般において同じ状態になりつつあるということがわかった。
「より近く、よりゆっくり」という方向に変わってきている。少しくらい不便になってもいいと。また、日本人はそういうことを、受け入れられると思いますよ。
本書 p.275
Iターン、Uターン、スローライフ、断捨離、バンライフ、ミニマリストなどなど、便利になりすぎた世の中で逆に少し不便でもいいやという人が増えてきていると思う。
「効率を上げる」というこれまでのスタイルから「人生を楽しむ」というスタイルに自然と変わってきているのかもしれない。これが成熟社会、ゼロ金利に起因するものだとしたら、今後もこのトレンドは強まっていくと推定される。
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